そのとき私は、ちょっと難しい打ち合わせを終えて、ほっと一息ついたところだった。
次のミーティングに備えて、メモをとりながら頭を整理していたら——
玄関のドアが開く音。そして、2階へと上がってくる小さな足音。
「ん? 何かあったのかな?」と直感的に思った。
うちでは、私が在宅で仕事をしているのもあって、息子の帰宅時にはできるだけ「おかえり」と迎えるようにしている。
でも、Web打ち合わせが入る日は「今日は2階で仕事しているから話しかけないでね」と事前に伝えてあるし、息子もそのルールを守ってくれる。
だから、息子が“勝手に”2階にあがってくるなんて、めったにないことだ。
トントン。
ノックの音も、どこか遠慮がち。

はーい



入っても良い?



今ちょうど終わったとこ。いいよ〜



ママ、大変!助けて!
——何かが起きたんだ、とすぐにわかった。
この日の出来事


帰宅してすぐ、息子が伝えてきたこと
息子が伝えてきたのは、「近所の1年生の子が、家に入れなくて困っている」ということでした。
その子は家の前でずっと待っていて、どうしていいか分からず困っていた、と。
すぐに現場へ
私は片付けもそこそこに、とりあえずスマホだけ持ってすぐに家を出ました。
息子に案内されて向かうと、アパートの入り口で、小さな男の子が座り込んでいました。
話を聞くと、今日はおばあちゃんが迎えに来るはずだったけれど来ない。家の鍵も持っていないとのこと。
時計を見ると、1年生の下校時刻からだいぶ時間が経っていました。
学校に連絡し、無事におばあちゃんと再会
近所の子と言っても、学年がだいぶ違うので、相手の子はもちろん保護者の方の連絡先もわかりません。
私はすぐに学校へ電話した方が良いな・・・と思いつつも、数秒だけ迷いました。



今向かってるところだったりするのかな。良かれと思って行動した時に限って、入れ違いですぐおばあちゃんが来たりするんだよな・・・。
それだと、学校に連絡したりして、相手に恥をかかせてしまうかな・・・。
でも、6月とは言え真夏のような暑さ。
このまま待たせるのもかわいそうだと思い、意を決して学校へ連絡し、保護者(おばあちゃん)への連絡をお願いしました。
しばらくして、おばあちゃんが車で到着。私たちもホッと一息。おばあちゃんからは何度もお礼の言葉をいただきました。
先生からの言葉と、息子の誇らしげな表情
その日の夕方、先方のお母さんからも丁寧なお礼の電話をいただきました。
また、息子の担任の先生からもお礼の電話があり、「息子さんが1年生を助けようとしたこと、6年生として本当に素晴らしかったです。」とのお言葉。
それを伝えると、「明日、学校で褒めてもらえるかな?」とニコニコの息子。
翌日、息子は先生にたくさん褒められ、照れながらも誇らしげに報告してくれました。
息子の「やさしさ」に改めて気づけた日
今回の出来事で感じたのは、息子の他人を思いやる気持ち。本当に親ばかですみません。笑
母として、「ちゃんと育ってるんだな」と思えたことが嬉しくてたまらなかった。
私を頼ってくれたことも、素直に嬉しかった
「お母さんなら何とかしてくれる」と思ってくれたこと。それが私にとっては、何よりの信頼の証でした。
在宅で働いている今だからこそ、すぐに動ける自分でいられたことにも感謝しています。
私自身も、人の役に立てたことが嬉しかった
私自身も、久しぶりに「誰かの役に立てた」と感じた一日でもありました。
毎日忙しく過ごすなかで、こんなふうに子どもに頼られること、純粋に誰かの役に立てたことが、こんなにも嬉しいなんて。
思い出した、小学生時代の私のこと
実は、私にも似たような経験があります。
小学生のころ、下級生を助けて先生に褒められたこと。息子の姿が、それを思い出させてくれました。
あのときの「小さな私」まで、今日改めて褒めてもらえたような気がしました。
子育てはやっぱり大変。でも、こういう日があるから。
反抗期に片足を突っ込んだ子どもとの日々。正直、うまくいかないこと、心配なことも多いです。
でも、こんな日があるから、またがんばろうと思える。
「ママ、大変!」と言ってきたの息子の声、褒められて誇らしげなニコニコ笑顔。
これから、反抗期で「このやろー!」と思った時に今日のことを思い出すようにしよう。そう感じた出来事でした。笑